加賀友禅×アップサイクル

加賀友禅×アップサイクル

技を受け継ぎ、友禅の新たな伝統を築く

加賀友禅の歴史は約500年前、現在の石川県・金沢独自の染色技法「梅染」にさかのぼります。17世紀中頃には加賀御国染と呼ばれる繊細な模様染が確立。
江戸元禄時代に京都で人気を博した扇絵師「宮崎友禅斎」のデザインと融合し加賀友禅の基礎が出来上がりました。
最盛期には350人を超える作家がいましたが、現在は後継者不足など、縮小の一途にあり、これまで培われてきた守るべき技術を次世代に継承していくことは喫緊の課題でもあります。

■“加賀友禅” 伝統の技と地球環境を、次世代に繋げていくためのコラボレーション

加賀友禅伝統の技を次世代に受け継いでいくため、2023年6月から「毎田染画工芸」の友禅作家である毎田仁嗣氏とのコラボレーションが決定。
毎田氏監修のもと、次世代を担う「京都精華大学」の学生がデザインと友禅染により原画を制作し、日本古来より必需品として活用されてきた“手ぬぐい”を制作するプロジェクトがスタートしました。

加賀友禅は、「加賀五彩」と呼ばれる藍・臙脂・黄土・草・古代紫を基調とした色合いや、写実的に描かれる草花をモチーフとした絵画調の模様が特徴です。
さらに、葉が虫に食われた様子を描き込む「虫喰い」、図柄に立体感を生み出す「先ぼかし」などの技法が使われます。仕上げに金箔や絞り、刺繍などの加飾をほとんどなく用いないことは京友禅と異なる特徴で、繊細な染技法のみで自然美を描き出します。

「先ぼかし」「虫喰い」

(色画像引用:協同組合 加賀染振興協会 http://www.kagayuzen.or.jp/)

このような現在の「友禅染」の技法を駆使し、デザイン、染色を行っております。
加賀友禅らしい落ち着きのある写実的な草花模様の他、若い世代の感性で現代風にアレンジした作品も注目です。

■デザインについて

輪廻転生(菊池優惟子:作)

廃棄される紙資源や間伐材を活用し、制作される紙糸が主成分「セルロース」を軸に輪廻しているように感じた。
そこから「輪廻」をテーマとし、友禅のモチーフによく用いられ、「輪廻転生、再生」の花言葉を持つキク科の植物をデザインに取り入れた。

紙糸で紡ぐ世界(前田乃愛:作)

アップサイクルによる豊かな環境により美しくなった生き物、今回では海洋汚染の改善に着目したイメージしました。
友禅染めならではの色と糸目の表現を、美しい未来のイメージや、紙糸とリンクさせました。

Cycle of...(亀田ひなた:作)

アップサイクルがプラスチックの削減に繋がり、大気・土壌・水質汚染が改善され、様々な生き物が生きやすい、豊かで美しい環境になりますように。

共生(レフマン サディカ:作)

自然との共生とジェンダーレスの 2 つの SDGs を合わせました。

 

タオル・風呂敷の代わりに、ファッションアイテムや手土産にもなる「手ぬぐい」として、日常生活に溶け込みます。

 

■毎田染画工芸について

毎田染画工芸は、伝統工芸を「古いもの」ではなく「現在へ続くファッションの積み重ね」と考えます。 三代にわたって守り続けてきた伝統の技を用いながら、加賀友禅のエッセンスを洋装、商品パッケージ、建築装飾など、きもの以外のさまざまな創作物に落とし込む挑戦を続けています。

 

毎田仁嗣

日本工芸会正会員/協同組合 加賀染振興協会理事/一般社団法人 加賀友禅文化協会理事/京都精華大学 非常勤講師
加賀友禅の持つ自然美と幾何学模様を融合させたデザインの着物を制作。
伝統的な友禅技法に独自の防染技法も交えて表現。
加賀友禅の技法や意匠を活かしたファッション、室内装飾、パッケージなど様々な制作を手掛けております。

■作家のデザインを最大限に引き出す「一貫制作体制」

加賀友禅は図案から仕上げまで約12-15工程があり、その全てが熟練の手作業で行われます。古来より分業が一般的である染色工程ですが、毎田染画工芸では工房内で一貫制作をしております。これにより、作家は作品の質を高め、時代に合わせた意匠を最終の仕上げまで責任を持って厳格に見届けることができます。

  • 1.図案作成

    自然の美しさやそこから得た感動を文様化してイメージを作成。着姿に留意しながら原寸大のデザインを紙に描きます。別注の場合はご依頼の色やモチーフで構成を制作いたします。

  • 2.仮仕立て

    白生地の状態で着物の形に仕立てます。別注の場合はお召しになる方の寸法に合わせて仮縫いいたします。

  • 3.下絵

    図案の上に仮仕立てした白生地を重ねて、「青花」と呼ばれる露草の花の汁を用いて模様を写し取ります。青花は水で消える性質があり、後工程で消えてなくなります。

  • 4.糊置き

    もち米の粉を蒸して作った糊を紙の筒に入れて絞り出し、下絵の線に沿って細く糊を引きます。これは「糸目糊」と呼ばれ、次工程でさす染料がにじみ出さないよう防波堤の役割を果たします。

  • 5.地入れ

    生地の裏側から豆汁を刷毛で引きます。彩色の染料のにじみを抑える効果があり、また、下絵の青花は水で散って無くります。

  • 6.彩色

    加賀友禅制作の中心となる工程で、糊を引いた輪郭の内側に、筆や刷毛を使ってさまざまな色を挿していきます。仕上がりの美しさと品格がここで決まるため、高い技術と色彩感覚が要求されます。

  • 7.下蒸し

    蒸気の箱に反物を入れ、数十分蒸すことで彩色した色を定着させます。

  • 8.中埋め

    「糊伏せ」ともいわれ、彩色された部分を糊で覆い、次工程で地色を染める際にこの部分に色が入り込むのを防ぎます。

  • 9.地染め

    「引き染」とも言われ、刷毛を使って反物の地色を染める工程です。むらなく均一に染めるには、刷毛に含ませる染液の量や、刷毛を動かす力が一定でなければならず、集中力と熟練を要します。

  • 10.本蒸し

    蒸気の箱に反物を入れ、数十分蒸すことで地染めした染料を定着させます。

  • 11.水洗い

    流水で糸目糊や伏せ糊、余分な染料を洗い流す工程です。自然の川で反物を洗う「友禅流し」は金沢の風物詩でもありました。現在はそのほとんどが水温、水質の安定した人工川で行われております。

  • 12.仕上げ

    蒸気によって生地の目や幅を整える「湯のし」や顔料による上仕上げ、染色補正を経て仕上げられます。

  • 13.仕立て

    図案制作から仕上げまで、全て熟練の手作業で作り上げられます。制作期間は通常の着物で数カ月、長いものでは一年以上の歳月をかけ、ひとつの作品が完成いたします。

    加賀友禅 振袖 毎田仁嗣作

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